新型コロナウイルス感染症対策で弁護士会の法律相談や法テラスの法律相談等が中止となってしまっています。そこで,当事務所で多いご相談について,一般的なご説明等をしていければと考えています。
さて,当事務所でここ最近相続のご相談が多くあります。その中では必ずしも相続をしたい方ばかりではなく,相続したくないという方もいらっしゃいます。そういった方にご説明する制度に相続放棄というものがあります。
そこで,今回は相続放棄のご説明をしようと思います。
1 相続放棄とその効力とは
相続放棄をすると,その相続に関しては,相続人ではなくなり,プラスの財産(預金や不動産など)もマイナスの財産(主に借金や連帯保証債務など)もすべて含む一切の権利義務を承継しないことになります。
よく間違えがちなのですが,単に相続人間で自分は相続を希望しないという意味で「放棄」という表現を使うことがあります。しかし,この「放棄」は「相続分」の放棄であり,民法で規定された「相続放棄」とは異なりますので,注意が必要です。この「相続放棄」には後ほど説明するように手続が定められています。
2 どういうときに使うのか?
当事務所で多い事例では,亡くなった方の遺産に借金があり,借金の額が多く全体でもマイナスのような場合や,普段付き合いのない親族の方について相続することとなり借金等があるかもしれない場合,遺産はいらないから今後遺産分割協議等で関与したくない場合などにご利用されることが多いです。
3 手続はどうやってするの?
相続放棄は,家庭裁判所で所定の手続をする必要があります。単に,相続人間で相続を放棄すると宣言するのでは,相続放棄にはなりません。
ちなみに,どこの裁判所でもよいというわけではなく,亡くなった方の住所地の管轄する家庭裁判所と決まっています。
例えば,亡くなられた方が江戸川区に住民票がある場合には,東京家庭裁判所に申立をする必要があります。
4 期限について
相続放棄には期限があり,相続開始を知った時から3か月以内に行う必要があります。
「相続開始を知った時」とは,通常,亡くなったことを知った時になる場合が多いでしょう。
5 相続放棄をした後は?
相続放棄についての受理証明書を取得することができます。
これが相続人ではないことの証明になります。
6 相続放棄の具体例
亡くなった方 Aさん
相続人 Bさん(Aさんの妻),C,Dさん(CさんとDさんはAB夫婦の子ども)
誰も相続放棄しない場合
相続人はB,C,Dさんになり,法定相続分はBさんが2分の1,C,Dさんがそれぞれ4分の1ずつです。
相続人の方々は土地や建物,預貯金はもちろん,借金も相続することとなります。
Cさんが相続放棄した場合
Cさんは相続人ではなくなりますので,相続人はB,Dさんになり,相続分もBさんとDさんが2分の1ずつとなります。
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